Dredd

2013年6月9日日曜日

映画評

t f B! P L
邦題:ジャッジ・ドレッド(2012年イギリス映画)

■概要
 1995年にシルベスタ・スタローン主演で映画化されたイギリスの同名コミックの、再映画化。
 95年版の続編ではなく、基本的に関係ない。コミックの内容は知らないが、本作の方が原作に忠実とのこと。
 主演はカール・アーバン。誰? という感じだが、「スタートレック」(2009)のマッコイと知って顔がわかった。
 が、本作ではいっさい顔が出ない。上の画像の通り、ずっとヘルメットをしている。はっきり言って、主人公は誰でもいい

■あらすじ
 核戦争後のアメリカ、廃墟の中に立つ巨大都市「メガシティ・ワン」のある1日を描く。8億人が住む人口過密状態の中、犯罪件数は1日1万件以上。裁判官であり死刑執行官である通称「ジャッジ」たちが、治安維持のため奔走している。
 
 その日、ジャッジの中でも特に優秀なドレッドに、新人ジャッジのカサンドラが試験として相棒に付けられた。超高層アパート「ピーチツリー」で発生した殺人事件の調査に向かった2人は、新種の麻薬「スローモ」絡みの殺人だと知る。そのまま売人を急襲、背後にギャングのボス「ママ」がいることを突き止める。ママの側近を捕え連行しようとしたところ、ママに気づかれ、アパートごと監禁されてしまう。ギャングの巣窟であるアパートの中、ドレッドとカサンドラの孤軍奮闘が始まる。

■評価
 95年版は陳腐な印象だったが、本作はシリアス路線で見応えあり。残酷描写が若干あり、R18指定となっている。
 2013年2月に日本で劇場公開されたらしいが、まったく話題に上らず、私も知らなかった。(失礼ながら)大したことないだろうと思っていたが、これがなかなかよくできている

 有名俳優はいっさい出演していないが、設定がきめ細かく、作りこまれている。「スローモ」という麻薬は使用者の感覚をスローモーションにする。核戦争の影響か、ミュータントが存在する。新人ジャッジのカサンドラはミュータントで透視能力があり、ドレッドを助ける場面もある。ギャングの女ボス「ママ」は壮絶なエピソードがあり、存在感が際立っている。

 舞台は密室となったアパートのみで、閉じ込められた主人公たちは上層へ向かわざるを得ない。このへんの設定は、以前に書いた「Raid Redemption」によく似ている。

 おそらく説明しきれなかったのだろうが、ママの部下のコンピューター担当の青年は、いろいろエピソードがありそうだ。目をくり抜かれ、替わりに機械の目(?)が入れられている。ママに犯罪を強要されていて、最後は解放されるのだが、彼については消化不良の感が否めない。

 ガジェットのこだわりも良い。ジャッジたちの銃は多機能でかっこいい。バイクは「アキラ」に登場する通称「金田バイク」みたいだ。
 思うに、よっぽど強力な敵でない限り、ジャッジの手に余るということはない。だから本作のようにアパートに閉じ込められ、2人きり、限られた弾薬と情報だけで戦わなければならない状況というのは必要だったのだろう。ママは異常者ではあるけれど生身の全然強くない女性だし、その部下たちも普通のチンピラだからだ。

■新人ジャッジの成長物語でもある
 主人公は当然ドレッドだろうけれど、相棒のカサンドラの存在感が強かった。スラムで生まれ、幼くして両親を亡くし、ジャッジの試験に3ポイント足らずで不合格だったが透視能力ゆえに試験採用された彼女に、観客は初めから共感すると思う。寡黙のうえ顔を見せないドレッドよりも、悩み葛藤するカサンドラに、思い入れをもって映画を観るのではないだろうか。そういう意味で、本作は彼女の成長の物語でもある。
 結末、自分はジャッジに不適格だと宣言するカサンドラに、ドレッドがどんな判断を下すか・・・。ぜひご覧いただきたいと思う。

追記)
 本作はTSUTAYAでしかレンタルできない。最近そういう映画が多い。独占するのはどうなのかと疑問ではあるが。

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