カルト被害者の回復方法について

2015年6月22日月曜日

カルト問題

t f B! P L
 カルト化教会かそれに類似した教会で、何らかの被害に遭った人々がいる。
 その被害を一言で言えば「信仰的虐待」と表現されるのだろうけれど、内訳は暴言や暴力、性的虐待や金銭搾取、不当労働、非常識な行為の強要など様々だ。またその程度もイロイロで、中にはひどい後遺障害を抱える人もいる。もちろんそこまでいかない人もいる。
 だから「カルト化教会の被害者」と一口に言っても被害状況はイロイロで、同じ教会であっても皆違う。問題教会から離れてすぐ別の教会に通えるようになる人もいれば、しばらく距離を置かないとならない人もいる。だから何らかの回復が必要なのは皆同じだけれど、回復の仕方は皆違う。
 という前提のもと、そういう被害者らがどのように回復していくのか、あるいは回復していけるのか、今回は書いてみたい。
 これから書くのは私自身や知り合いが実際に通った(そして今も通っている)回復のプロセスや方法であって、カルト被害者全員に当てはまる訳ではないと思う。またこれが最善とも思っていない。むしろ本当にこれで良かったのか、他になかったのか、と今も考えてばかりいる(でも結局、他に何もなかったという結論に辿り着くのだけれど)。だから何かを強く勧めることはできないし、参考程度に紹介することしかできない。
 また、カルト被害の結果として何らかの精神症状に苦しんでいる方は、心療内科などの専門機関を受診するべきだと私は考えている。素人考えで対処できるものではないし、精神論や根性論、中途半端な「牧会カウンセリング」等で悪化させることがあってはならないからだ。

 前置きが長くなったけれど、カルト化教会被害者の回復方法について書く。
 
・まずは離れる
 
 回復の第一のステップは、とにもかくにもそこから離れることだと思う。問題の場所から、物理的にも精神的にもある程度距離を取る必要がある。
 
 虐待の現場にいる限り虐待は続く。だから虐待に気づいた被害者(虐待と気づかない人々はそれを「訓練」とか「信仰」とかと思っている)は、それを拒絶するのであれば、脱会なり転会なりすることになる。
 ある人にとってそれは決死の脱出になるかもしれない。多くの痛みを伴う別離になるかもしれない。そうでなくても脱会自体エネルギーが必要で、ストレスの大きい作業だ。周囲の人々の協力がどうしても必要な場合もある(自分一人では脱会までいけないケースもある)。

・環境を変える

 これは上記の脱会も含むけれど、もう少し大きな視点で自分自身の環境を変えることだ。
 たとえば、脱会したけれど教会そのものが近所にある、という場合がある。その場合、どうしても教会が目に入るし、教会の記憶がよみがえるし、たぶん牧師本人に会う羽目にもなる。場合によってそれは非常に危険なことかもしれない。

 その場合は、思いきって引っ越すのが有効だと思う。住まいを変えることで住環境がガラリと変わり、今までのシガラミが途切れることで、心身に変化が現れるのは普通に想像できるだろう。

 もちろん仕事や学校の関係で、そう簡単に引っ越しなどできない人もいるだろう。費用だってかかる。けれど被害状況によっては、なんとしても引っ越さねばならないという状況があるのも事実だ。
 ちなみに私が知っているあるケースでは、信徒の大半が引っ越してその地域を離れていった。

 また引っ越す必要がない場合でも、何らかの小さな変化が良い効果をもたらすことがある。たとえば部屋のレイアウトを変えてみるとか、服装や髪形を変えてみるとか、通勤方法やルートを変えてみるとか、そういうことでけっこう心境は変化する。

「教会スタッフ」みたいな立場で教会に入り浸りだった人は、普通に働くだけでも大きな変化を体験するだろう。ブラックでなければ何でもいいと思うけれど、ちゃんと時間で区切られたまっとうな仕事を毎日するだけで、その人の環境は大きく変わる。毎日労働で疲れて、教会のことなど考える暇がない、という状況なら尚更いい。

・べつの教会に行ってみる

 これは被害者全員に勧められることではない。中にはしばらく教会に行かない方がいい人がいるからだ。
 けれどそこまで被害が大きくなく、信仰を捨てた訳でもなく、むしろ礼拝だけは続けたいと思っている人は、べつの教会に行ってみるのがいい。一つの教会に決めるのが不安だという人は、複数の教会に行ってみたらいい。またすぐに次の教会を決めなくてもいいと思う。

 カルト化教会は複数あるし、それに類似した教会も多い。以前書いたことがあるけれど、脱会したカルト被害者が次の教会を探して、また新たなカルト化教会を選んでしまうというのがある。だから次の教会選びはかなり慎重にした方がいい。そのためにはじっくり時間をかける必要もある。もちろん完璧な教会などないけれど。

・アウトプットする

 これは被害体験を表出させることだ。
 私の場合このブログが表出方法なのだけれど、べつに書くだけが全てではない。人によっては話すこともそうだし、被害者の会みたいなところで皆に話を聞いてもらうのもそうだ。親しい人に手紙で状況を書いてもいいし、誰にも見せない日記に書くのもいいだろう。

 いずれにせよ思いのたけを言語化することで、脳内の情報整理を進めることができる。モヤモヤ考えているうちは心に雲がかかった状態なのだけれど、それを言語化することでカテゴライズされ、客観的に見られるようになっていく。すると問題から一定の距離を置くことができて、結果的に心の負荷が減っていく。
 もちろん一朝一夕にそうなるのではない。じっくりコツコツ表出していく必要があるだろう。

・運動をする

 これは私個人の話だけれど、教会を離れた後、ある程度時間ができた。それまで教会奉仕で自分の時間が全然なかったのだ。
 それでどうしたかと言うと、なんとなくランニングを始めた。運動不足だったし、教会時代に若干健康を害していたからだ。それにもともと走るのが好きだった。
 それで走る始めると、最初はきつかったけれど、次第に体調が良くなっていった。続けることでより長く走れるようになった。体力も戻ったし、仕事も楽になった。夜も眠れるようになった。
 結果、教会のことをあれこれ考える時間が減ったし、あまり気にならなくなった。

 やはり心と体はつながっていて、体の状態が良くなると、心もその影響を受けるようだ。

 もちろんこれは私のケースであって、ランニングが絶対的に良いという話ではない。人それぞれにリフレッシュ法があるだろうし、その中には運動もあるだろう、というだけの話だ。中には運動できない人もいる。
 要は心身のバランスを取ることだろう。心ばかり使うと、人によっては鬱っぽくなる。体も適度に使ったほうがいい。

・最後に

 積極的な方法ではないけれど、回復にとって「時間」は大切な要因だと思う。何でも時間が経つことで風化していくからだ。次第に忘れていくし、気にならなくなっていく。
 もちろんそれは被害の度合いにもよる。中には何年経ってもいっこうに忘れられないほどの大きな被害もある。けれどそこまでの被害なら、専門的な援助が必要になるだろうから、ここに書いてあるようなことは初めから何の役にも立たない。

 今回復の過程にある人、あるいはこれから回復を要する人にとって、この記事が何かの参考になればと願ってやまない。
 また他に有効な回復方法をご存知の方がいるなら、是非共有していただきたいと思う。

・追記(2015.6.23)

 さっそく有効な回復方法についてコメントを匿名にていただいたので、紹介したい。
 以下、匿名様からのコメント。

 今まで出来なかった自分磨きをしたよ。
 ジムに行って、美味しいもの食べて買い物行って、今まで教会と奉仕三昧で、出来なかったことしてみた。barでお酒も飲んだ。訓練学校の教科書も全部処分して、預言のテープも処分して、ありとあらゆるメッセージのCD処分して、聖書以外の教会にまつわるもの家から排除した。いろんな友達とご飯たべて、なんだか昔の自分に戻ったような気がした。そしたら、私にしかできないこと少しだけ見えてきた。(匿名)

※ちなみに一つだけ書いておくと、預言テープやCD、映像の類は、私はすべて保管している。どんなバカなことが行われていたか、どんな逸脱があったかを検証する為だ。またいつか証拠として提出する必要があるかもしれない、とも考えている。
 匿名様ありがとうございました。

QooQ