身内の不正は晒すべきか隠すべきか。「末期癌パフォーマンス」に思うこと

2015年1月13日火曜日

信仰に見せかけた…

t f B! P L
 海外のちょっと見過ごせないニュースが日本で全然報じられていない、というケースがあったので書きたい。
 
 本人が公式に認めているから実名で書くけれど、オーストラリアのクリスチャンシンガー、マイケル・ググリムッチ氏が2006年から2年間、自身を末期ガン患者だと偽っていたという。ヒルソングのライブDVD "This is our God" で、酸素吸入をしたまま「癒し」の信仰を宣言して"Healer"を歌うググリムッチ氏の姿を観ることができる。それが良く言えば「演出」、悪く言えばウソだったという訳だ。
 
 
 同氏がカメラの前で泣きながら謝罪する姿の真偽はともかく、公式にウソを認めて謝罪したのは事実のようだ。youtube上のコメントを見ても、ググリムッチ氏に同情的なものが多い。
「ウソでさえも神様は益に変えて下さる。この歌(Healerのこと)は本当に素晴らしい」みたいな感じである。
 
 以前から書いている通り、私はかつて熱心な聖霊派クリスチャンだったと思う。上記のDVDも持っていて(今も家のどこかで埃をかぶっている)、よく観たものだ。だからググリムッチ氏の名前自体は最近まで知らなかったけれど、末期ガン患者なのに酸素を吸いながら舞台に立って歌うクリスチャンのことはよく知っていた。非常にセンセーショナルな姿だった。
 
 だからそれが真っ赤なウソ(繰り返すけれど、良く言えば「演出」?)だったのはガッカリだ。私が普段書いていることが証明された形でもある。
 ちなみに同DVDを観て「神の臨在に溢れている」とか言っていた日本人牧師は一体どうなのだろうか。その感性(霊性?)は信用していいものだろうか。
 
 それはともかく、ググリムッチ氏のウソは残念ではあるけれど、彼が必要な謝罪と補償を済ませたのなら、これ以上何も言及することはないと私は思う。社会的制裁も受けているだろうし、「末期ガンでも主を賛美するパフォーマンスで目立ちたい」という発想の幼稚さを、誰より彼自身が痛感しただろうからだ。
 
 それより私が問題に思うのは、そういう見過ごせない情報が日本で全然報じられないことだ。関連ワードで検索しても日本では何も出てこないし、上記のDVD"This is our God"を販売しているキリスト教系サイトを見ると、「2年間ガンと闘ってきた・・・」なんてまだ書いてある。事実を知らないか、あるいは知っていて黙っているかのどちらかではないだろうか。
 
 私もtwitterの交流で最近たまたま知ったのだけれど、そうでなければ未だにググリムッチ氏を末期ガンのシンガーだと思っていたことだろう。そしてそういう人は多いはずだ。
 
 海外のことであっても、クリスチャンという身内の恥はさらしたくないという心理が働くのかもしれない。ただでさえ劣勢なキリスト業界のイメージダウンは避けたいのだろうか。それはそれでわからないではないけれど、だったら尚のこと、身内の不正は身内が正すべきではないだろうか。そういう自浄作用が働かないとしたら、キリスト教って何なんだろうという話になるだろうし、誰もわざわざ信じる必要性を感じないだろうと私は思う。

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