無重力の恐怖、『ゼロ・グラビティ』

2014年2月3日月曜日

映画評

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『ゼロ・グラビティ』を3D劇場鑑賞した。ネタバレなしの感想を書く。
 あらすじはこちらから(結末まで書かれているので注意)。

 とにかく、この作品は劇場で観るべきだと思う。大画面、大音響もさることながら、3Dの特性がよく生かされたシーンがところどころにあり、大変驚かされるからだ。文字通り「あるもの」が飛び出してきて、私は思わず何度か顔をよけてしまった。宇宙空間と地球の美しさも、大画面ならではだと思う。

 また、非常にリアルな宇宙空間を疑似体験させられる。スタートレックみたいな映画が多い昨今、「宇宙空間そのものの恐怖」はあまり描かれていない。たとえば重力がないという現実。一度船外に投げ出されると、自力では戻ることができない。それどころか投げ出された時の身体の回転がいつまでも続く。酸素もみるみる減っていく。助けが来なければ、そのまま永遠に宇宙空間を漂流し、死ぬだけだ。
 主人公のストーン博士(サンドラ・ブロック)は、事故により突然船外に投げ出され、一気にこの恐怖に叩き落される。しかもグルグル回っていて自分の位置さえわからない。通信も途絶える。パニックになり、酸素をみるみる消費してしまう。

 私たちは約90分間、彼女の身に起こる様々な「宇宙の恐怖」に付き合わされる。死にもの狂いで宇宙船のどこかにしがみつき、酸素不足で意識が朦朧となり、船内火災に悩まされ、ガス欠に絶望する。まさに命運尽きたと思われたその時、ストーン博士は死を覚悟するのだけれど、観ている私も「もういいかな」と思わせられた。ここまで努力してダメだったんだからもうダメだろう、楽に死ねた方がいい、みたいな。
 その「もういいかな」を助長するのが、彼女の不幸な身の上にある。シングルマザーだったけれど4歳の一人娘を事故で亡くしており、今は一人きり。帰りを待つ人間もいない。ただ毎日仕事しているだけ、という抜け殻みたいな女性である。だから途中、彼女が諦めて娘のもとに行こうとするのは、必然的でさえある。

 ネタバレになるから書かないけれど、そこで奇跡的な現象が起こり、ストーン博士を再起させる。彼女は絶対諦めないと誓って再び動き出す。彼女は地球で失った「生」への執着を宇宙で取り戻し、それを胸に地球への帰還を目指すことになる

 この結末は是非劇場で観ていただきたい。DVDでこの迫力がどこまで通じるか疑問である。

追記)
 登場人物はサンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーの二人だけだけれど、地球の管制センターの声役でエド・ハリスも出演している。観終わってから知ったのだけれど。

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