お約束の人間ドラマを楽しめる『ザ・タワー 超高層ビル大火災』のレビュー(その1)

2013年12月7日土曜日

こだわり映画評

t f B! P L

■概要

 2012年の韓国映画 "The Tower"(邦題『ザ・タワー 超高層ビル大火災』) 。監督は『第7鉱区』のキム・ジフン。
 大火災を起こした超高層ビル「タワースカイ」からの人々の脱出を描く、災害パニックもの。一口に言うと、韓国版「タワーリング・インフェルノ」(古い!)か。脱出を図る人々と、それを救助せんとする消防隊それぞれのお約束的人間ドラマが満載で、そこがまたいい。韓国とは最近政治的にいろいろあるけれど、映画は映画。私は十分楽しませてもらった。
 水戸黄門的な定石の(多少クサい)人間ドラマがいける人にはおススメの一本だ。

■主要な登場人物
イ・デホ
 施設管理チーフ。ハナの父。
ハナ
 デホの娘。事情は語られないが、母親はいない。
ユニ
 厨房のマネージャー。
カン隊長
 ヨイド消防署の隊長。数々の伝説があるらしい。
ソヌ
 ヨイド消防隊に赴任したばかりの新人隊員。
インゴン
 厨房の若い調理師。

 その他に清掃婦、妊婦、消防署署長など。

■あらすじ(ネタバレ注意・番号は必ずしも展開順ではない)
 ヨイド島に建つ超高層ビル「タワースカイ」の面々は、クリスマス・イブのパーティーの準備で朝から慌ただしい。
 セキュリティ部門のチーフであるデホは、天気予報に反して今夜は雪が降ると娘のハナに断言してきた。彼は厨房マネージャーのユニに片思いしていて、仕事の傍、何とかキッカケを作ろうとしている。そんな折、厨房でインゴンのミスによりボヤが発生。何とか消し止められたが、ユニが管理責任を問われてしまう。しかしデホはスプリンクラーの故障を発見、ユニを窮地から救った。これを期に二人は距離を縮めることになる。


「タワースカイ」の若き会長は、このクリスマス・イブの夜、タワー上空からヘリで雪を降らすサプライズ演出を計画していた。タワー上空は上昇気流が強く飛行できないと当局から通達されても、コネを使ってゴリ押ししてしまう。
 その頃、ヨイド消防署に新人のソヌが赴任してきた。「伝説の消防士」と言われるカン隊長を一目見たいと思っていたが、ちょうど非番だった。そのカン隊長はイブに休んだことがなく、今年ばかりは休むよう、周囲から言われていたのだった。カン隊長はケーキ屋で、妻のためにイチゴのケーキを注文していた。


 デホの娘ハナがタワーにやってきた。タワーに降る雪を見せたいと、デホが呼んでおいたのだ。そこで同僚が気を利かせて、ユニがハナの面倒を見るように仕向ける。
 デホはスプリンクラーの故障の原因を調べ、配管の凍結を発見した。60階以上はスプリンクラーが働かないとわかった。至急対策をとるよう上司に掛け合うが、パーティの準備でそれどころではないと一蹴される。
 掃除婦は息子の大学の授業料を払うため、金持ちに嫌がらせされても黙々と働いている。タワーに立ち寄った息子と久しぶりの会話を交わすが、冷たくあしらわれる。


 
 夜になり、予定通り雪を積んだヘリがやって来る。会長の挨拶が終わるタイミングで雪が降り、パーティは非常に盛り上がる。が、やはり上昇気流が強く、ヘリが一基操縦不能となってしまう。そしてそのままタワーの63階に激突、燃料に引火して大爆発を起こす。
 タワーは途端にパニックとなり、人々が逃げ出す。地上にいたデホはハナを助けるために中に戻る。63階付近はスプリンクラーが働かず、エレベーターも階段もあっという間に炎に包まれ、逃げ場はない。付近にいたユニとハナはやむなく中華レストランに逃げ込んだ。
 その頃、インゴンとその恋人は展望エレベーター内に閉じ込められていた。助けを呼ぶが、皆無視して逃げていく。そんな彼らを助けたのは、妊娠中の若い女性だった。
 
 火災の知らせを受けたヨイド消防隊は緊急出動する。カン隊長は非番であったが、放っておけず仲間に合流した。


 
 カン隊長率いる消防隊は徒歩でタワーに突入する。高層階の火元付近で、ハナを探しにきたデホの危ういところを助ける。デホには地上に避難するよう指示するが、「娘を放って逃げられる訳がない」と拒絶される。やむなくデホに無線機を渡し、隊は火元へ向かう。
 デホはハナを探して、さらに上階へ向かった。
 地上では対策本部が設置されるが、できることは少ない。屋上からヘリで要救助者を移送することになるが、「要人を優先しろ」と上層部から命じられる。また会長の独断により、まだ要救助者がいるのに防火扉が閉じられることになった。


 デホは途中で負傷した掃除婦を助け、インゴンとも再会する。そのとき防火扉が閉まりだすが、間一髪のところで中華レストランに逃れることができた。そこでハナとユニ、その他の生存者たちと合流する。
 その頃、火元では消防隊員たちが必死の消火活動をしていた。カン隊長の捨て身の作戦が功を奏し、火元は完全に鎮火する。隊はデホの連絡を受けて救出に向かうが、その前に別の要人を救助するよう命じられる。渋々行ってみると、そこにはセレブの夫婦が一組いるだけだった。
 清掃婦の息子は、バイト先で火災のニュースを見る。息子は母の身を案じて、タワーへと駆け出す。


 中華レストラン付近の階が崩壊を始める。デホたちは清掃用のゴンドラに飛び乗って難を逃れ、階下に向かう。途中で次々と生存者が犠牲となってしまう。ツインタワーの反対側に続く渡り廊下にたどり着くが、そこも崩壊。先に渡って行ったソヌとハナがどうなったかわからない。無線にも応答しない。ハナを亡くしたと思い、デホは悲嘆に暮れる。
 その頃、対策本部ではタワーの倒壊が予想されていた。倒壊による甚大な被害を防ぐため、要救助者が残っていてもタワーを爆破するしかないと結論づけられる。


 万策つきたデホたちは、一か八か、貨物用エレベーターのワイヤーを切って落下する方法に賭けることにした。地上付近の自動制御装置が働いてくれれば、エレベーターは安全に止まるかもしれない。結果、5、6階付近で一時的に止まってくれた。その間にデホとカン隊長は脱出するが、あとの者は間に合わない。地下に落下していくエレベーターを尻目に、二人はいったん外に出た。
 そこにはソヌによって無事救助されていたハナがいた。再会を喜ぶデホとハナ。


 デホはエレベーターに残してきたユニたちを見捨てる訳にはいかず、カン隊長とソヌと共に再びタワーに入る。タワー爆破のタイムリミットが迫る中、落下したエレベーターにたどり着くことができた。中にはユニとわずかな生存者が残っていた。
 雨水タンクを爆破し、その流れに乗って排水管を流れ、漢江に出るという作戦だったが、途中で起爆リモコンを落としてしまっていた。カン隊長は自ら手動で爆破すると覚悟し、デホとソヌを先に行かせる。カン隊長は妻の携帯電話にメッセージを残し、起爆スイッチを押した。

10
 生存者たちは無事に漢江に流れ着き、救助された。デホとハナ、ユニは再会を果たす。清掃婦とその息子も再会を喜んだ。インゴンとその恋人、そして若い妊婦も無事救助された。しかしタワーは完全に爆破崩落し、多くの犠牲者が出たことを物語っている。(終わり)

※今回はあらすじ篇ということで。次回は作品の見どころなど解説したい。

QooQ