Taken 2 (96時間 リベンジ)

2013年5月3日金曜日

映画評

t f B! P L

 さらわれた娘を奪還するため、パリの町で大暴れしたスゴ腕お父さんのその後を描く快作続編。
 今度は元妻と自分自身が囚われ、娘がその救出に乗り出すという、前作の裏返し構造で事件が始まるのが興味深い。

・父親対決
 今回の黒幕は、前作の誘拐犯「トロポヤのマルコ」のお父さん。つまり子を想う親どうしの対決、ということになる。

 マルコの父は、息子が誘拐犯だろうが何だろうが関係なく、愛する息子のカタキ打ちに執念を燃やす。その愛情って異常だろうと突っ込まれそうだが、いやいや、我らが主人公ブライアンの異常さも負けてない。娘の教習所通いを徹底管理し、彼氏の居所も即座に突き止めて乗り込む。このお父さん、緊急事態にこそ生きるだろうが、日常ではウザ過ぎて家族はやってられないのではないだろうか。

・ブライアンと家族の関係
 今回の新展開として、元妻レノーアとの復縁の兆しが見られる。レノーアは富豪の再婚相手スチュアートと別居中で、関係回復を図った家族旅行もキャンセルされてしまう。憔悴しているところにブライアンに助けの手を差し伸べられ、今回のイスタンブール旅行と相成った。二人が復縁するのでは、と期待させておいての事件勃発である。
 もう一つの展開は、娘キムに彼氏ができたことであろう。これは彼女の自立を示唆する伏線だと思われる。事件発生後、両親を救うべく立ち上がる彼女の勇気につながっていく。
 娘役のマギー・グレイスは「ロックアウト」でも勇敢に戦う大統領令嬢を演じていたが、もともとタフなタイプなのだろうと思った。

・元同僚たち
 前作に引き続き、ブライアンのCIA時代の同僚のサムたちも出演する。が、出番は少ない。冒頭のバーベキュー(またかよ)と、中盤にほんの少しである。
個人的にはもう少し活躍してほしかった。

・構成
 90分ちょっとと短い。
 拉致からの脱出、そして娘を大使館に避難させるまでが前半。そして元妻を救出する追跡劇が後半と言えるだろう。

 正直、圧巻のお父さんパワーは前作の方が良かった。たぶん今回の敵が弱いせいだと思う。
 前作は敵勢力が複数あった。アルバニアの誘拐犯グループに、フランス情報局、人身売買グループに変態金持ち一行。それらを全部蹴散らして突き進む姿に「お父さんカッケー」と感嘆したのだ。特に元仕事仲間のジャン=ピエールの奥さんを平気で撃つシーンは驚きだったが、今回そういう衝撃はなかった。敵勢力もマルコのお父さん一味だけだし、不意打ちでなかったら、そもそもブライアンの相手にならなかったような気がする。

 とはいえ、元妻と娘の両方を救出しなければならない緊迫感はなかなかのもの。前作からの感情移入がある分、ハラハラさせられた。

・スパイのスキル
 残念ながら目新しいものはなかった気がする。手榴弾の爆発音だけで自分たちの監禁場所を割り出すのと、乗っている車の振動と周囲の音だけでどこをどう走ったか再現するのは確かにすごいが…、前作ほどではないような。

・続編として
 前作が好きだった人は、若干物足りないながらも楽しめると思う。ブライアンたち家族のその後が見られるのは嬉しいし、やっぱり家族を想うお父さんの姿は何度見てもカッコいい。
 是非三部作にしてほしいと思う。マルコの家族は他にもいるみたいだから、リベンジ要員には困らないだろうし。

 ちなみに「96時間」は邦題で、前作の「誘拐されて96時間以内に発見できなければアウト」から来ている。当然ながら本作にそういう時間制限はない。

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