映画としてたいへん面白かったし、スケールのでかい作品をよく作ってくれたと思う。制作に関わられた皆さんの努力に賛辞を送りたい。
私が感銘をうけたのは、野村萬斎演ずる主人公の成田長親、愛称「のぼう様」のキャラについてだ。
この映画のキモは、豊臣の軍勢二万に対し、北条方はたったの五百、しかも総大将は「何にもできない」のぼう様という、圧倒的不利な戦況をどうひっくり返していくか、にある。
こののぼう、侍でありながら、馬の乗り降りすら満足にできない。剣術にも戦術にも長けているようには見えない(そういう活躍の場はない)。普段から、田畑で農民たちと戯れているだけだ。
そんな奴に何ができるかと、内外の誰もが思う。が、その予想に反して奇策が成功、豊臣勢を退ける。
その逆転劇がこの映画の面白さであり、判官贔屓の日本人には受けるのだと思う。
そういう訳で、のぼうは無能なダメ侍だと思われている。
が、実は全然無能なんかではない。むしろ秀でたリーダーシップを持っていると私は思った。
そしてそれは、劇中で奇策が成功したからではない。あれが失敗したとしても、のぼうが優れたリーダーであることに何ら変わりはないと思う。
どこが優れていたかというと、一口で言えば人格である。
具体的には謙遜さと正直さである。農民の少女に呼びつけにされても平気だし、戦になってしまった時には皆にゴメンと謝る。
また、分別である。自分に何ができて何ができないか、よくわきまえている。リーダーとしてどうあれば良いか、何をしたら良いか、よくわかっている。普段農民たちと一緒にいるのは、何も考えないからでなく、逆によく考えているからだろう。
周囲はそんな彼を見て、「助けてあげたい」とか「自分にできることをしてあげたい」とか思い、集まってくる。
詰まる所、リーダーに必要なのはそういうことだと思う。
つまり人をまとめる力であって、それは一にも二にも、人格だと思う。この人格は、品性と言ってもいいかもしれない。
のぼうのリーダーシップは、周囲には型破りに見えるのかもしれない。配下たちはその予想外の行動に度々驚き、困惑する。
しかし、のぼうのリーダーシップこそが、本当に必要とされるリーダーシップの在り方だと私は思う。
それが現代においても型破りなままであるなら、私たちは生きづらい世界に生きているのではないだろうか。
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