『踊る大捜査線 The Movie Final 新たなる希望』をDVDで観た。
1997年から15年に及ぶシリーズの完結篇である。
2010年の3作目、「ヤツらを開放せよ!」は、いつの間にか上映されていた印象があった。
ネットの批評も散々だったし、もう人気が落ちたのかと思っていた。が、観てみたらやっぱり「踊る」だった。そのクオリティもこだわりも、笑いも感動もそのまま、非常に良くできていた。
今回の4作目、完結篇となるが、話題性がどうだったのかイマイチわからない。が、本広克行監督がTwitterで制作状況を逐一ツィートしていて、その内容が面白く、ずっと期待していた。
劇場には観に行けなかったが、DVDリリースと同時に借りて観た。
余談だが、DVDレンタル店舗でのレンタル開始日は、告知されているリリース日の前日というのが暗黙的事実である。今回の『新たなる希望』は4月26日(金)リリースだったが、案の定、25日(木)午前中のうちに店頭に並んでいた。
人気作でなかなかレンタルできないことが予想される作品などは、この手で先行して借りることをお勧めする。
さて、内容であるが、あらすじ等はWikipediaで見るのが一番であろう。
私は若干のネタバレを含みつつ、気になったことを書きたい。
・犯人について
今回の悪役はSMAPの香取信吾、というのが話題の一つだった。
明るいイメージの彼が寡黙でストイックな犯人を演じるということで期待していたが、本当に寡黙である。というか、セリフが2つか3つしかなかった気がする。くわえて出番も少ない。
ぶっちゃけ、あれって香取信吾じゃなきゃいけなかったのか?
そう思う理由の一つは、彼が主犯でないということだ。もう2人の刑事とグルで、3人の犯行ということになっている。
その2人だが、3作目「ヤツらを解放せよ!」にも出演している。
今回の事件は6年前の誘拐事件時の怨恨から起こしたものだから、「ヤツらを解放せよ!」の時は、2人とも怒りプンプンの状態だったはずだ。が、そうは見えなかった。
このへんは、3作目制作時にはなかった設定だったのだろう。
・すみれさん、どうなったの
恩田すみれ刑事が実際に辞職してしまうが、ラストで青島に止められ、頷いている。刑事を続けてくれるのかな、と思っていたが、それっきり登場しなかったのは残念だ。結局どうなったのだろう。
ちなみに、彼女の最後の行動は疑問だらけではないだろうか? まあ、お祭りの最後と思ったらいろいろな矛盾も勘弁できるのかもしれない。
・オープニングクレジットがかっこいい
おなじみのテーマをバックに、15年分の映像がフラッシュバックする仕組み。メインキャラの若返り方が見てて感慨深い。いくつか日付が表示されていて気になった。"1997.2.18"とか"1997.3.4"とかだ。気になって調べてみたら、どうやらドラマ版の放送日のようだ。その回のサブタイトルも大小様々に表示されている。ほとんど一瞬だから、見ててもわかりづらいが。
・全体的に
まとまりがないと言ったらそうかもしれない。
犯人グループの犯行が計画的だったのかどうか、よくわからない。真下の息子を誘拐するくだりも、絵葉書を見てとっさに思いついたように見える。が、その割には6年前の同じ日に犯行が設定されている。主犯格が最終的にしたかったことも、復讐なのか、警察機構の改革なのか、よくよく考えると見えてこない。
犯人とか犯行動機とかの弱さは、「踊る」シリーズに共通していると個人的に思う。
・2つで十分ですよ
監督のツィートで一番面白かったのはこれである。
知る人ぞ知るカルトSF映画『ブレードランナー』の有名なセリフが、パロディとして使われるとのことで期待していた。さりげなく出てくるのかと思いきや、ラストではっきり、やや強調ぎみに聞こえてきた。「3つでいいよね」「2つで十分です」
ちょっと気になったのは、『ブレードランナー』では「4つだよ、4つ」というのに対して「2つで十分ですよ」と言っていることだ。
シリーズ全体的に、細部まで非常にこだわって作られた作品である。注意して観るといろいろ隠し設定があることがわかる。
たとえばすみれさんが乗る九州行きのバスはTTRで、『交渉人 真下正義』の舞台となる地下鉄の系列であることがわかる。そのバス運転手も、同映画に車掌として出演していた。
ちなみに、そのバスの番号は877で、本作には意味深いゴロ合わせでもある。
また、冒頭の商店街を走るボクシング男性は3作目のラストにも出演しているなど、挙げるとキリがないくらいである。
細部にこだわりすぎて、本筋の詰めがイマイチになってしまったような気もする。
が、そんなこんなも含めて、私にとって愛すべきシリーズである。
追記)
「踊る大捜査線」シリーズのWikipediaを見ると、「時間軸」の項目で、全作品が時系列に並べられた一覧表がある。
それによると本作「The Final」が2006年12月、「The Movie 3」が2010年3月となっているが、これは明らかに間違いであろう。The Finalで逮捕された犯人刑事たちがThe Movie 3で刑事として登場するはずがないし、彼らが恨みを抱いた6年前の事件が2000年のことだとしたら、真下正義は当時まだ交渉人になっていなかったはずだ。重大な矛盾を生むことになってしまう。
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