キリスト教と言うより「ホームスクール教」なのでは

2018年4月27日金曜日

教育

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「ホームスクール」をご存知でしょうか。
 日本だと「ホームスクール? 何それ?」と若干奇妙がられますが、アメリカではわりと知られているようです。

 アメリカでは就学年齢にある子供の約3%がホームスクールを利用しています。100人に3人、30人クラスの中に1人、という割合です。マイノリティですが、数にすると約177万人(2012年)と、決して少数ではありません。

 説明するまでもありませんが、ホームスクールとは家庭で、親が子供に教育を施すというものです。子供は学校に行かず、基本的に家庭や地域で過ごします。その子に合った内容・ペースで個別的に学習を進められるのがメリットです。

 最大のデメリットは、卒業資格が得られないことでしょう。学校に行かないので当然ですが。だからアメリカのホームスクールの子たちは、最終的に一般の大学に入って、それを学歴とすることが多いようです。

 2011年の映画『‪ソウルサーファー‬』をご存知でしょうか。 サーフィン好きの少女べサニーが、サメに左腕を喰い千切られてもなおサーフィンに挑戦する、という実話も元にした映画です。キリスト教界隈で、と言うよりホームスクール界隈で、話題になりました。

 このべサニーがホームスクールをしているのですね。映画の中で「今日はこの勉強をここまでやる」みたいな会話をしています。昼間から家にいて、家事を手伝ったりサーフィンをしたりで、学校に行く様子はありません。

 実際、べサニー・ハミルトンさんはホームスクールで育ったクリスチャンです。その彼女が左腕を失ったにも関わらずサーフィンに挑戦し続ける姿に、日本のホームスクールやチャーチスクールの子たちは感動したのですね。と言うか、親や教師たちがそのように仕向けたのですが。
「ハンデを負っても、神様が助けて下さる。だからべサニーのように頑張ろう」と。

 アメリカでは、原理主義なクリスチャン家庭が、「信仰的な理由」からホームスクールを選ぶことがあります。アメリカの公教育が「進化論」を教えるからです。彼らは「創造論」こそ正しいと信じて疑いませんから、子供が間違ったことを公立学校で教わるのを、黙って見ていられないのですね。

 それだけでなく、自分の子が「この世」の子たちに毒されるわけにはいかない、とも考えています。彼らは『ハリーポッター』などのファンタジーを「悪魔崇拝」と断定していますから、その悪影響から子供たちを守らなければならないわけです。 結果、彼らにとっても、ホームスクールは有力な選択肢になります。

 だからアメリカのホームスクールは、教育におけるごく一般的な選択肢であって、本来宗教色のないものですが、一部のクリスチャン家庭が宗教的な理由で利用している、といった感じです。

 日本に入ってきたのは、残念ながら原理主義クリスチャンの方の流れです。
 日本のホームスクールは、
「公教育から子供たちを守ろう」
「早くから聖書教育をして立派なクリスチャンになってもらおう」
 というクリスチャン視点が、前提になっていますから。そして公教育に敵対しています。日本のホームスクーラーの集まりに行くと、いかに公教育がダメか、いかにホームスクールが素晴らしいか、そんな話でいっぱいです。

 彼らは「この世からの分離」を重視しています。「子供をこの世の悪影響に晒すわけにはいかない」のです。だから子供が見るもの、聞くもの、触れるものを制限しようとします。『ハリーポッター』など、その存在さえ子供に知らせたくないでしょう。

 子供にテレビを見せてはいけない。
 マンガやアニメを見せてはいけない。
 映画を見るならこれとこれだけ。
 テレビゲームは脳を腐らせるからダメ。
 そういう娯楽より聖書、祈り、賛美だ・・・。

 そう考えると、子供たちが哀れですね。
 彼らは家や家族から‪一時‬も離れられず、娯楽を制限され、いつも決まったものでしか遊べません。友達はみんなホームスクーラーです。だから「外の世界」のことが、ほとんどわからなくなっています。

「子供たちはそれを喜んでいる」と言う親もいるでしょう。実際そういう子もいるかもしれません。でももともと選択肢が与えられていないのですから、フェアでない気がするのですが。

 もちろん親は教育熱心で、子供のことを愛して、ホームスクールを選んだのでしょう。でも原理主義特有の「偏り」は否めません。

 ホームスクール支援団体の機関紙に、彼らの「証」が多数掲載されています。その中にこんな見出しがありました。
ホームスクールに完全に移行。これで出エジプトは完了!

 ある家庭が、ついに念願のホームスクールを始めた、という趣旨の記事でした。それまでにどんな葛藤があって、どんな苦労があって、でもホームスクールをやっている今はどんなに楽しくて幸せか、といった内容です。

 要は、自分の子供を公教育から「脱出」させたことを、旧約聖書の「出エジプト」にたとえているのですね。公教育が「悪いエジプト」で、ホームスクールこそ「約束の地」だと。

「ホームスクールこそ主の御心」
「ホームスクールこそ真の教育」
「ホームスクール出身の我が子らが、日本の将来を背負っていく」

 日本のホームスクールは「教育方法の一形態」である以前に、一種の宗教のようになっていると私は思います。キリスト教と言うより、キリスト教に似た「ホームスクール教」みたいな。ちょっと言い過ぎかもしれませんが。

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→4月22日発行のメールマガジンにて、さらに詳しく書いています。

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