【時事】アルマーニ小学生 / あたしおかあさんだから・・・

2018年2月10日土曜日

時事問題

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アルマーニ小学生、現る

 中央区のある区立小学校が、来年度からアルマーニ監修の標準服を導入するそうです。 今年度までの標準服が2万円弱だったのに比べて、アルマーニ版は(一通り揃えると)9万円くらいになるとか。反対の声もあったようですが、結局校長が押し切った形らしいです(内部事情は知りません)。

 なんでそんな高くするんだ、なんでアルマーニなんだ、という反発も起こっているようですが、それでも入学予定者は確保されているようです。ということは、9万円ポーンと払う家庭が揃っている、ということですね。 それだけでなく、小学生の成長は早いですから、約6年間アルマーニ版と度々お付き合いしていくわけで、そういう財力が暗黙的な入学要件になっている気もします。

 もっとも私立の制服とか、中学や高校とかの制服もけっこう高いですから、9万円はべらぼうな数字ではないでしょう。でも2万円で済んだものが9万円に上がったのは、確かに高く感じます。どういう意図があるのでしょうか。

 小学生にアルマーニなんて早すぎる、みたいな意見もあると思いますが、着る方(買う方)は嬉しいのでしょうね。たぶん低学年の子は「あるまーに」なんてどうでもいいんでしょうけれど、早い子は「他との違い」「特別感」みたいなものを敏感に感じ取ると思います。親の方は言わずもがなです。

 そういう違いを楽しみたい、つまり優越感を得たい、という「客層」が、この「アルマーニ版標準服」のターゲットなのかもしれません。聞くと、学区を飛び越えて入学してくる子(家庭)が多いとのこと。学校側は標準服をあえて高価にして、富裕層だけ呼び込みたかったのかもしれません(多分そうだと思います)。

 このニュースに私が興味を持ったのは、それだけ日本の「格差」が顕在化・表面化したのだなあと思ったからです。

 かつて「一億総中流」なんて呼ばれた時代がありましたが、今は断崖絶壁みたいな格差が当たり前となりつつあります。
 都内を見回してみても、富裕層だけが住めるような街があります。富裕層だけが入れるような店もあります(本当は誰でも入れるのですよ)。明らかに富裕層をターゲットにした商品もあります。
 一方で一般層・貧困層が多く住む街があり、入る店があり、買う商品があります。
 両者には大きな格差があります。たとえば毎回の夕食に3〜4万かける世帯もあれば、月の食費が3〜4万な世帯もあります。それぞれ、見えている世界が違うのではないでしょうか。

 新約聖書のルカの福音書16章26節には、死後の世界の描写があります。
 そこでは死んだ金持ちは火に焼かれて苦しんでいますが、死んだ貧乏人ラザロは、アブラハムに抱かれて安らかです。金持ちはその窮状をアブラハムに訴えますが、アブラハムは冷徹にもこう言い放ちます。
そちらからこちらには渡れないし、こちらからそちらにも渡れない
 両者には「大きな溝」がある、というわけですね。

「アルマーニ版標準服」のニュースを見て、この「大きな溝」あるいは「断絶」あるいは「格差」みたいなものを、私は想起しました。
 その格差が良いか悪いか、という話ではありません。良くても悪くても、日本はすでにそういう社会になっているんだ、という話です。

 あーそれと、本当に金持ちが死後に火に焼かれて、貧乏人が良い思いをするかどうかは、わかりません。

賛否両論あるのは・・・ダメ?

 絵本作家ののぶみさんが書いた歌詞が、炎上しているようです。
『あたしおかあさんだから』という歌ですが、「おかあさんだから(子供のために)これだけ我慢している」「これだけ努力している」みたいな内容です。

 これを聞いて感動した人がいる一方で、「母親に自己犠牲を強いるな」と批判する人もいるようです。賛否両論なのですね。のぶみさん本人はこの批判を受けて、後日謝罪しています。

 私個人はこの歌詞が好きでも嫌いでもありませんが、子育てのネガティブな一面を切り取ったのかな、という感想があります。

 育児は確かに簡単なものではありませんが、状況は人によって様々でしょう。
 中にはものすごく苦労なさっている方もいると思います。毎日が一杯一杯で、追い詰められたような心理状態の方もいるでしょう。昨今頻発している幼児虐待は、そういう育児の困難さと無関係でありません。
 でも一方で育児を(大変なのは変わりないけれど)うまくこなしている、楽しんでいる、という方もいると思います。家族の支援を十分に受けられている方もいるでしょう。

 必ずしもネガティブな面ばかりではない、ということですね。これが、今回の批判の背景にあるのかもしれません。

 でもそもそもの話、のぶみさんの歌詞は一創作物ですから、気に入る人もいれば気に入らない人もいるのは、ごく自然なことではないでしょうか。「感動した」という感想もあれば、「母親に自己犠牲を強いるな」という感想もあっていいと思います。

 だから批判を受けて謝罪したのが、私にはどうもよくわかりません。

 もちろん作家は人気商売ですから、嫌われてしまったら仕事にならない、という事情があるのでしょう。その辺は辛いところですね。でも作ったものにケチがついていちいち謝っていたら、この先大変じゃないかなあとも思います。

 あの村上春樹さんを見て下さい。ものすごく好かれるか、ものすごく嫌われるかのどちらかです(笑)。しかも本人は嫌われても「やれやれ」としか思わないみたいです。逞しいですね。作家はそれくらいでいいんじゃないかなあと私は思うのですが。

 ところでのぶみさんは牧師家庭に育ったそうで、なかなか大変な子供時代を過ごされたそうです。その体験が、彼の作品の世界観に影響を与えているのかもしれません。

 実はのぶみさんのような「牧師の子」は、珍しくありません。過酷な子供時代を過ごした「牧師の子」を、残念ながら何人も知っています。
「羊を養う」はずの牧師が、自分の子供を十分養えないというのは、なんとも本末転倒な気がするのですけどね・・・。

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