2017年7月23日日曜日

キマジメくんのクリスチャン生活 第53話

 メボ・ルンド師と溝田牧師は牧師室で、最後の打ち合わせをしているようだ。少し遅れてサトリコ姉妹も入っていった。軽食係の姉妹がお盆に水とお菓子を載せて中に入り、すぐに出てきた。
 集会まであと30分。開場時間なので、チャペルの両開きのドアが開かれた。と言っても開場待ちの行列ができているわけではない。短いロビーには誰もいない。それでもBGMを流し、イーゼルに看板を載せて入口に出す。来場者がいればすぐプログラム(中には献金袋がもれなく入っている)を渡せるよう、受付係が入口付近に立った。キマジメくんはパソコンを操作し、スクリーンに今回の集会のポスター画像を映した。

『メボ・ルンド師の癒しとミラクルの大聖会・2014』

 ポスターの中では、ルンド師が今日と同じような(たぶん同じだろう)真っ白いスーツを着て、真面目な顔をして、右手を挙げている。後光が差しているように見えるのは、キマジメくんがphotoshopで加工したからだ(ルンド師の右手からも光が放たれているように加工していた)。いかにも何かすごいことが起こりそうな雰囲気である。
 キマジメくんはポスターを作るたびにphotoshopのテクニックを少しずつ学んでいた。今ははかなり、イメージ通りのものが作れるようになっている。まだまだ勉強が必要だけれど、それは単純に嬉しいことではあった。

  さて集会まで15分となり、一般の信徒が続々と集まってきた。座席に指定はないけれど、皆だいたい決まった席に着く。後ろの方に座る人には、受付係がやんわりと、前の方に移動するよう促していた。一応「伝道集会」で、新来者のために後ろの方の席を確保しておかなければならないからだ。
 10分前になり、ルンド師と溝田牧師とサトリコ姉妹が出てきた。笑顔で言葉を交わしながら最前列に座る。そこに賛美リーダーの姉妹が呼ばれた。おそらく最終の打ち合わせだろう。牧師から二、三の指示を受けると、姉妹はすぐに戻っていった。
 楽器の奉仕者たちはそれぞれ自分の楽器の位置に付く。コーラスの面々もステージ脇に並んで立った。
 キマジメくんはパワーポイントの操作を迅速にできるように、スライドを何度も確認していた。問題ないように思われた。本番で粗相があったら後から何を言われるかわからない。慎重に、でも確実に操作しなければならない。
 5分前になり、入口付近が何やら騒々しくなった。数人の男性が入ってきたようだ。どれも初めて見る顔だった。メディアのブースは入口のすぐ脇にあるので、彼らの会話がキマジメくんにはよく聞こえた。
「ルンド先生、もう来てるの?」
 一人にそう訊かれ、受付係がハイと答える。
「僕たちね、ルンド先生の集会にはいつも参加してるんですよ」男が言う。
「僕らが助祷するんですよ、いつも。癒しが起こるようにね」と別の男。
  受付係が愛想よく受け答えして、彼らを後ろの方の席に案内する。その最中も男たちは話し続けている。
「ミニストリーの時間になったら、僕たち前に出て祈りますんでよろしく」
「あんまり人が入ってないみたいだね。癒しが起こるかなこれで」
「お、ルンド先生今日も白だね」
 キマジメくんは「ジョトウ」の意味がわからず、しばらく考えてみて、たぶん「助祷」だろうと想像した。合っているかどうかはわからない。
 彼らはどうやらルンド師の集会の常連のようだ。そういう人種がいるとは知らなかった。全部で4人だが、4人ともあまり清潔感のない身なりをしている。無造作な短髪に無精ひげ、洗いざらしのブロードシャツによれよれのジーパン、あちこち綻んだリュックかボストンバック。靴は玄関で脱いでいるからわからないけれど、ボロボロなのが予想できた。
 しかしキマジメくんはすぐに「人を見かけで判断してはいけない」という言葉を思い出した。イエス様だって貧しい身なりをしていたはずではないか。癒しの業(わざ)に身なりは関係ないはずだ。そして、4人の男性に対して直感的に抱いた嫌悪感のようなものを、悔い改めることにした。それは決して、不潔な身なりからだけ感じたものではなかったけれど。
 その後も何人かチャペルに入ってきた。皆一般の信徒か、その知り合いだった。
 ざっと見ても満席に近いようだった。例の4人以外にも知らない顔がいくつかあった。たぶん癒しを求めてきたのだろう。
 そして時間になり、賛美リーダーがステージ中央に立つ。満面の笑みで口を開く。
「みなさん、こんにちはー! 皆さんを歓迎します! そして主をここに歓迎したいと思います! ハレルヤー!!」
 ドラムのカウントと共に奏楽が始まり、リーダーとコーラスが手拍子を打つ。会衆にも手拍子が広がっていく。コーラスはすでにノリノリのステップを踏んで、「フーッ」とか「ハレルヤ」とか合いの手を入れている(リハーサルでそう指示されていたからだ)。
 そして皆で賛美を歌い始めた。 (続く)


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・この物語はフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。
・この小説は不定期連載です。
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2 件のコメント:

  1. ハレルヤ〜、久しぶりのキマジメ君を感謝します〜。この聖会に主の奇跡が満ち溢れたことを確信し感謝します〜。Fuck.

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  2. キマジメ君に久しぶりに会えて本当にうれしいです。

    >無造作な短髪に無精ひげ、洗いざらしのブロードシャツによれよれのジーパン、あちこち綻んだリュックかボストンバック。靴は玄関で脱いでいるからわからないけれど、ボロボロなのが予想できた。
    新興宗教系プロテスタントによくある「献金貧乏」の結果、このような姿になったのでしょうか?だとしたらお気の毒です。よくいるんですよね新興宗教系プロテスタントの教会にこういう人(笑)。
    女の人だとぱさぱさで脂分のない髪(トリートメント等で手入れがなされている様子が全く見受けられない)、髪型はたいていザンギリみたいな?(たぶんQBハウスみたいな千円カット、もしくは家族や友人といった素人の手による散髪)
    着ている服もみすぼらしい感じで、見るからにやつれ果てている様子ですね。
    年配の女性でも、はいている靴はきちんとしたインソールが入っていないもので、おそらく膝や腰への衝撃ダイレクトだろうと推測される製品ですよ。(そんな靴はいて若いもんと一緒になって縦ノリぴょんぴょんすると膝にきちゃうわ~になります)
    安物の靴は膝や腰の負担を軽減するためのインソールが入っていないことがほとんどで、若いうちならいいのですが、あの年齢になって履き続けているのはかなり危険です。衝撃をしっかりと吸収してくれるインソールが入った靴は万単位ですので、おそらく献金優先で自分のはく靴にまでお金が回らないのかもしれませんね。

    「繁栄の福音」をいう教会の話ですけどねちなみに。教祖様だけ丸々と肥え太って、信者たちはこれですよ!これ!(大爆笑)

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