PKの方々の苦労について

2015年11月19日木曜日

教会生活あれこれ

t f B! P L
 若干デリケートな話題ですが、"PK"について。

 PKというと普通ならサッカーのシュート合戦を思い出すでしょうが、プロテスタント界隈では"Pastor's kid"こと「牧師の子」の方で専ら使われています。と言ってもこの言葉、牧師の子たちが自分自身を指してやや自嘲気味(?)に使うことが多い気がします。だから牧師家庭でない信徒の方には、あまり馴染みがないかもしれません。
 このPという言葉には、特別な意味が込められています。その意味を的確に表現しているかどうかわかりませんが、たぶん次のような意味になります。

 牧師家庭特有の「苦労」を経験して育った子。

 人間みんな環境とか親とかを選べないで生まれてきます。だからどうしても不公平感があります。たとえば裕福な家庭と貧しい家庭とでは、子供の将来の可能性は大きく変わります。またお金の話でなくても、子供がどう育つかは親次第とも言えます(特に思春期までは)。そしてたぶん多くの子供が、「こんな家に生まれてこなければ良かった」みたいなことを一度は考えるでしょう。反抗期やら思春期の苛立ちやらがイロイロ混じり合って、そういう感情に辿りつくのだと思います。

 けれど、そういう葛藤は多くの人にとって通り雨みたいなもので、いつまでも持ち続けることはないでしょう。でもPKの場合、その葛藤がわりと長く続く傾向があるように思います。もちろんいろんなPKがいるので一括りに語ることはできません。また牧師の子だけが特別ひどい苦労をするという訳でもないはずです。けれど「牧師家庭で育つ」ということが彼らにある似通った負荷をかけていて、その影響は決して小さくなく、だからこそPKに共通した特徴みたいなものがあるのだと思います。

 では実際に、PKの方々から聞いたり見たりした「牧師家庭の子の苦労」について、挙げてみましょう。これは私が知り得た範囲のことなので、もっと他にもあるでしょうし、もしかしたら偏っているかもしれません。

■PK(牧師の子)の苦労

・礼拝に必ず出席しなければならないから、日曜日に出かけたことがない。
・学校の部活動などは基本できない。できても日曜の試合に出られないのでレギュラーになれない。
・教会に行くと大勢の親が待っていて、だからいつも「良い子」でいなければならない。 
・他の信徒の子たちに比べて模範的でならなければならない(演出でも)。
・年齢が上がれば上がるほど、礼拝が苦痛になっていく。でも休めない。
・牧師の子として敬虔さを見せるか、あるいはその反動としてグレるか。でもグレてもグレきれない。
・家に第三者がいることが多く、プライベートを持ちづらい。
・大切にしている玩具や服やその他の持ち物を、(親である牧師に言われて)信徒の子供に泣く泣く譲ることがある。あるいは無断で既に譲られている。
・家におカネがないのがわかっているから欲しがれない。
・テレビゲームとかしたいけどしたいと言えない。
・学校の成績が悪いと、いつのまにか大勢の信徒が家庭教師になっている。
・親である牧師が教会を優先するので、結果家族の時間がない。
・進路のことでハンパなく悩む。牧師になりたくないけどそう期待されているのがわかるから。
・親の職業を聞かれるとつい「社長」とか「自営業」とか言ってしまう。

 以上、目に見えてわかりやすいことを挙げました。これだけ見ると「ちょっと大変そう」ってレベルを抜けないかもしれませんが、事態はもっと深刻だと思います。
 たとえばあるPKの場合、ほとんどいつも家に第三者がいたそうです。問題のある信徒の子供とか、他教会の牧師の子供(問題児)とか、ちょっとメンヘラな人とか、DV被害から逃げてきた親子とか、行くあてのない高齢者とか、とにかくいろんな素性の人が、家にやってきたそうです。しかも予定も何もなく、家に帰ると突然いたり、突然いなくなっていたり、夜中に来たり、自分の部屋を開放しなければならなかったりと、まあプライバシーなどなかったようです。それに対して嫌な顔一つすることもできません。したら牧師である親に怒られるからです。

 ちなみにそのPKは年齢の割に大人びていました。いつも笑顔で、よく気が利いて、不平不満など一切言いません。それでいてどこか覚めた目をしているのです。たぶん生育環境の中で、自分なりに適応してきた結果なのでしょう。

 では何故こうなってしまうのか? という話になると、当然ですが牧師業について言及することになるでしょう。牧師業と言っても教団教派によってずいぶん違うと思いますが、このPK問題がよく取り上げられるのは、やはり聖霊派に多いと思います。だから聖霊派の牧師業についてみていくことが、PK問題の原因を探るうえで重要だと思います。というわけで次回に続きます。

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