2014年11月19日水曜日

キマジメくんのクリスチャン生活 第47話

 という訳で、『メボ・ルンド師の癒しとミラクルの大聖会・2014』の準備が本格的には始まった。

 その後のミーティングで、細かい担当が決められた。当日の会場セッティングや司会、賛美のコーディネート、軽食の準備、メボ・ルンド師の送迎と接待、通訳などだ。それぞれで準備を進め、溝田牧師が全体を監督する。そして週に1回、日曜礼拝の後に奉仕者全員でミーティングを持ち、それぞれの進捗状況を報告することになった。
 キマジメくんは「メディア担当」になり、ホームページの管理とか、メボ・ルンド師の紹介映像作りとか、同師の書籍の管理とか、当日の撮影とかをすることになった。けれど映像作りとか撮影とか、まったくの未経験である。キマジメくんはどうしたら良いかわからず、溝田牧師に相談することにした。

「これはチャレンジだよ、キマジメくん」牧師は言った。「人間、成長しなければならないと聖書に書いてある。創世記のはじめ、エデンの園で神がアダムとエバに言うだろ、『うめよ、ふえよ、地を満たせ』と。あれはね、成長を意味してるんだ。だから成長しないことは、御心に反するという意味で、罪なんだよ。そして成長とは、今できないことにチャレンジしていくことなんだ」
「はい」
「それでだね、キマジメくん。今回は君がメディアを担当するよう、主が導いておられるんだよ。私の意思じゃない。主のご意志なんだ。もちろん、どうしても不都合があるなら辞めてもいいんだけどね。でもそれだと、主のご意志に逆らうことになるからねぇ・・・」
「はい、やります」
 キマジメくんは即答した。主が求めておられるなら、やるべきだと思ったからだ。主は試練とともに、逃れの道も用意しておられると書いてある。耐えられない試練は与えられない。ということは、これは耐えられる試練であって、成長の機会なのだ・・・キマジメくんはそんな風に考えた。
「それでね、キマジメくん。メディアってのはセンスだよ。それも霊的なセンスだ。映像をどう作るとか、ホームページをどうデザインするとか、撮影をどうするとか、そういうのは祈っていれば与えられる、霊的感覚なんだ。これは皆には言わない秘密の真理だよ。だから君が今すべき第一の準備はね、祈りだ。主を第一にすれば、すべてのものが与えられる。聖書にそう書いてあるだろ?」
「はい、確かに」

 という訳でキマジメくんは家に帰り、祈ってみた。メボ・ルンド師の紹介映像をどう作るべきか、どんなホームページを作るべきか、どう撮影すべきか。けれど明確なものは何一つ与えられない。自分の信仰が足りないんだ、祈りが足りないんだ、と思ってキマジメくんは悔い改め、また祈った。しかし何時間たっても何も与えられない。だからまた悔い改める・・・その繰り返しで一日終わった。

 次のミーティングの時がきた。奉仕者たちが続々集まる。
 ミーティングのはじめは、やはり「異言」の祈りである。1時間近く全員で「異言」で祈ったり、互いのために祈ったりして、「霊的雰囲気」を高めていった。そして皆で「主の勝利」と叫んでから、本題に入った。
「じゃ、準備の進捗状況、順番に報告して」ソファにふんぞり返った牧師が言う。
 特に順番を指定されなかったので、端の人から順番に報告を始めた。何人かが終えて、軽食係が報告を始めた時のこと。
「これ、軽食のメニュー?」牧師が渡された紙を見て言う。
「はい」軽食係の姉妹が、やや緊張した声で答える。
「これねえ、基本いいんだけどねえ、カボチャサラダはないなあ」
「カボチャサラダ、ダメですか?」
「うーん、まあ君が知らないのも無理ないけどねえ」牧師は指でテーブルをトントン叩きながら言う。「カボチャはねえ、実は、悪魔崇拝の足掛かりになるんだよ。ほら、ハロウィンがあっただろ? あれは悪魔崇拝の典型だよ、君、まさかハロウィンパーティとかしてないだろうねえ?」
 一部でどよめきが起こる。信徒らが互いに顔を見合わせる。ある信徒が言う。
「確かに、ハロウィンみたいな禍々しい行事には、悪魔崇拝の邪悪な気配を感じますな。私なんかあの日、御霊に感じて霊の戦いをさせられましたよ。ま、打ち破りましたがね
「それは私もだよ」溝田牧師も言う。「あの日はこの地域一帯が重くなったからね。ハロウィンを祝う人が、それだけ多かったってことだな。敵の勢力で一時的であれ、大きくなったからね、打ち破るのに苦労したよ。戦い終わって、しばらく寝込んでしまったよ」
「そうだったんですか、先生ご苦労様です」何人かの信徒が言う。
「いやいや」牧師は軽く手を挙げてそれに応えた。

 という訳で、メボ・ルンド聖会の軽食コーナーからカボチャサラダが削除された。またそれ以降の全ての教会イベントから、カボチャの存在が消えた。
 また教会の近所のスーパーはそれ以降、カボチャの売り上げを若干落とすことになった。スーパー側には、その理由は知る由もない。(続く)

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・この物語はフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。
・この小説は不定期連載です。
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4 件のコメント:

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  2. 「私の意思じゃない主のご意思なんだ」というくだりで、中島知子の洗脳騒動を思い出しました。一人カルトの教祖は岩崎理絵というデブスでした(笑)。
    彼女は中島の生活全般を支配し、「神の計画ではあなたは肉を食べることになっています」とやっていました(ただ単に岩崎自身が焼肉を食べたかっただけだろうと思いますが)。
    中島を自分と同じデブにし、仕事もあまりさせず、年収は一億あったというのにほとんどなくなり、マンションの家賃も滞納するようになり、家具までしまいに売って・・・
    中島知子とキマジメ君が重なってみえます。

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  3. 健康に良くないとか、高くて手がでないとか、一般的ではない食材であるとかならばわかりますが、全くもって馬鹿馬鹿しい事です。
    カボチャに限らず、すべてのものは神が造られたのではないでしょうか?

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  4. |という訳で、メボ・ルンド聖会の軽食コーナーからカボチャサラダが削除された。またそれ以降の全ての教会イベントから、カボチャの存在が消えた。 また教会の近所のスーパーはそれ以降、カボチャの売り上げを若干落とすことになった。スーパー側には、その理由は知る由もない。

    …ちょっと待った。
    溝田牧師の教会では、近所のスーパーの売り上げに影響を与えるくらい、カボチャを買っていたのかね(笑)?

    カボチャサラダだけで、ちょっと大げさな気がする藁

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