2014年11月12日水曜日

キマジメくんのクリスチャン生活 第46話

 さて、教会は伝道集会の準備を始めた。タタカイ兄弟の一件など、何もなかったかのようだ。溝田牧師はタタカイ兄弟に普通に話しかけるし、兄弟も自然に受け答えする。キマジメくんはどう捉えたらいいものか混乱したけれど、すぐに伝道集会の準備が忙しくなって、それどころではなくなった。

 今度の集会は、「癒し」を前面に掲げたものだった。アメリカから有名な「癒しのミニスター」が来日するそうで、そのスケジュールに合わせて開くことになっていた。集会名は、講師の名前を入れて「メボ・ルンドの癒しの聖会」となった。キマジメくんはさっそくポスターを作り、牧師に見せた。

「うん、いいね」
 牧師は開口一番そう言った。一発でOKが出るのはなかなか珍しい。今回はスムースに行きそうだな、とキマジメくんが思った矢先、牧師が付け加えた。
「あ、でも、たぶんメボ・ルンド先生は来年も来られるみたいだから・・・。そうだ、『メボ・ルンドの癒しの聖会・2014』にしようかな。急に変えて申し訳ないけど」
「あ、はい。じゃあ2014を付ければいいですね」
「うん、そうだね」
 文字を付け加えるだけなら時間はかからない。キマジメくんはその場でパソコンをいじり、修正したものを牧師に見せた。
「ああ、いいね」と溝田牧師。「あ・・・、でも、今回は大きな集会になるからな・・・。人も沢山集まるだろうし・・・。そうだ、『メボ・ルンドの癒しの大聖会・2014』でどうだろう」
「あ、『大』を付けるんですね、はい」
 キマジメくんはまた修正して、見せた。
「うーん、いいんだけどねえ」牧師は眉間にシワを寄せる。「なんかこう、インパクトがないよねえ」
「インパクト、ですか」
「うん、インパクトは大事だよ、キマジメくん。ポスターを見て、行ってみようかなと思う人が一人でも増えたら、それだけ救われる魂いが増えるということだからね。そんな重要なことはないよ」
「あ、はい、それは確かに」
「だからインパクトがねえ・・・、そうだ、『メボ・ルンドの癒しと奇跡の大聖会・2014』でどうだろう」
「あ、いいと思います」
 キマジメくんは言われた通り修正する。
「うん、だいぶ違うね。インパクトもある。どう思う?」
「いいと思います」
 正直、そのあたりはキマジメくんにはどうでも良く思えた。「じゃあこれで印刷に・・・」
「あ、ちょっと待って」と溝田牧師。「メボ・ルンドって、呼びつけじゃマズイよねえ。『メボ・ルンド師』って敬称を入れようか」
「じゃあ、『メボ・ルンド師の癒しと奇跡の大聖会・2014』ですね?」
「うん、そうだね、それでいこう」
 キマジメくんは最後の修正を終え、牧師に見せた。
 牧師はまだ眉間にシワを寄せている。「キマジメくん、悪いんだけど、最後の修正、お願いしてもいい?」
「あ、はい。何でしょう」
「その『奇跡』ってところさ、『ミラクル』に変えようか。ほんとゴメンね」
 という訳で、集会名は『メボ・ルンド師の癒しとミラクルの大聖会・2014』となった。

 次の日曜日、教会の至るところにそのポスターが貼り出された。礼拝中のアナウンスでも、その集会の広報の為に時間が割かれた。
「今回、アメリカで癒しの器として用いられている、メボ・ルンド先生を当教会にお迎えすることになりました。ハレルヤ!」
 溝田牧師は明るい声で言う。「この集会では、すごい癒しの業が起こると信じます。ですから皆さん、お知り合いの中で、特に病にある方を誘ってきて下さい。そしてこの集会で、癒しを体験してもらいましょう。そして癒された人々が主を信じ受け入れるなら、神の国はますます拡大します。ハレルヤ!」
 会衆も口々に「ハレルヤ」「アーメン」と言う。
「では最後に、この集会の祝福のために祈りましょう。この、メボ・ルンド師の癒しの聖会・・・じゃなくて、メボ・ルンドの癒しと奇跡の・・・・あ、これも違う。えと、何だっけ、集会名? ま、『メボ・ルンド聖会』って略してもいいですね。じゃあ祈りましょう!」

 えぇっ? とキマジメくんは思った。(続く)

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・この物語はフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。
・この小説は不定期連載です。
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