2014年9月30日火曜日

キマジメくんのクリスチャン生活 第42話

 その夜、キマジメくんはベッド脇に跪き、また「異言」で祈った。時折、両親のことが思い出された。そのたびに、「主の御名によって」その思いを振り切った。主にのみフォーカスを置いて祈らなければならない、と溝田牧師に言われているからだ。

 もはや両親に理解してもらおうと期待していなかった。ただ、自分の進む道を邪魔されるのだけは困る。この終末の時、自分に与えられている使命を全うしなければならないからだ。そして来たるべき「携挙」の時に、取り残されないようにしなければならない。
 だから両親とは、しばらく連絡を取らないことにした。話せばややこしくなるし、それで自分の働きが妨げられるかもしれない。それでは敵である「サタン」の思う壺だ。御心が止められることだけは、あってはならない。

 と、いうようなことを考えながら、キマジメくんは祈った。「バラバラ」という異言を時に低音で、時に高音で、時に早く、時に遅くしつつ続けた。するとそのうち、ある御言葉が心に浮かんできた。
「私のために両親を捨てた者は...」
 瞬間、これは主からの言葉だ、とキマジメくんは確信した。やはり主も、両親と距離を置くようにと言っておられるのだ。自分の考えは、間違っていなかった。
「主よ、感謝します」
 キマジメくんは呟く。「どうか両親による迫害を私が力強く退け、あなたの御心を十分に為し遂げることができますように」
 そこまで祈ると、キマジメくんは満足してベッドに入った。「異言」で長く祈ったせいか、体が熱くなっている。主の臨在に包まれているからだろう。体のどこか深いところから、力がみなぎってくるのを感じる。これが聖霊の力なのか、とキマジメくんは感心した。まだまだ祈れそうだった。
 やはり、「異言」の祈りの効果は絶大だ。今までできなかったことが、大きな損失に感じられる。そんなことを考えながら、キマジメくんは眠りについた。

 翌日は月曜で、朝から教会でミーティングがあった。キマジメくんは初めて、平日の朝から教会に行った。もう大学に行く必要はない。何だか心がウキウキして、かなり早く家を出てしまった。
 ミーティングは10時からだけれど、9時には会堂に入った。当然ながら誰もいない。キマジメくんは会堂を掃除しながら待つことにした。もちろん、その間も「異言」の祈りは欠かさない。掃除機をかけながら、「バラバラ」と呟く。
 9時50分になって、サトリコ姉妹がやって来た。それに続いて、何人かのスタッフがやって来た。それぞれ挨拶して談笑する。キマジメくんは初めての参加だったけれど、皆快く迎えてくれた。
 そんなこんなで10時になったが、溝田牧師はまだ来ていない。もうミーティングの準備はできている。皆手持ちぶさたで、話したり、スマホをいじったり、思い思いにしている。そうこうしているうち10分たち、20分たち、30分たった。スタッフの1人が、サトリコ姉妹に言う。「ちょっと遅すぎませんか。先生に連絡してみては」
「そうですね」姉妹がスマホを取り出す。ちょうどその時、ドアが開いた。溝田牧師だった。
「いやいや、遅れてすまないね」そう言いながら入ってくる。「急な電話があってね、どうしても対応が必要だったんでね」
 スタッフは口々に、「朝から大変ですね」とか「ご苦労様です」とか言う。キマジメくんも何か気の効いたことを言おうと思ったけれど、タイミングを逸してしまった。
 中央の席に腰を下ろした牧師が、一堂を見回すと
同時に言った。「あれ、タタカイ兄弟がいないじゃないか。どうなってるんだ?」
「特に連絡はありませんが」サトリコ姉妹が素早く答える。
「じゃあ連絡したまえ」と牧師。「ミーティングに遅れるなんて言語道断だよ、冗談じゃない」
 サトリコ姉妹が電話をかけ、話しはじめる。すると溝田牧師が電話を回すよう合図した。サトリコ姉妹はすぐに牧師に電話を渡した。
「もしもし、タタカイ兄弟か」牧師は受話器に向かってぶっきらぼうに言う。「君ねえ、どんな事情があってもミーティングに遅れるなんて言語道断じゃないか。いつも言ってるだろう。君を待ってる間、こっちは話が進まないんだよ。この損失どうしてくれるんだ? こうしている間にも主は働いておられるんだよ。それなのに君のせいで教会全体が遅れてしまうじゃないか! 大至急来たまえ!」
 それだけ言うと溝田牧師は電話を切り、足を組み直して、ふんぞり返った。
「まったく困ったもんだ」
 そう言ったきり、黙り込む。スタッフも一堂黙っている。
 キマジメくんは、「これが献身か」と思った。身の引き締まる思いだった。(続く)

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・この物語はフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。
・この小説は不定期連載です。
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