2014年7月12日土曜日

キマジメくんのクリスチャン生活 第37話

 翌日の日曜日、キマジメくんは早めに教会に行った。うまくすれば溝田牧師に祈ってもらえると思ったからだ。会堂にはまだ誰もいなかった。けれど、牧師室から話し声が聞こえる。キマジメくんは思い切ってノックしてみた。意外に快活な牧師の声が、すぐに返ってきた。「どうぞ」
 ドアを開けると女性がいた。教会スタッフのサトリコ姉妹だ。溝田牧師と向かい合って、何やら話していたようだ。溝田牧師は話を中断して、キマジメくんを見た。「おはよう、ずいぶん早いね」
 牧師にそう言われ、キマジメくんは事情を話した。一週間祈ってみたことと、やはり油注がれた人に祈ってほしいこととだ。
「なるほど、聖霊のバプテスマの為にね」牧師は言う。「それは大切なことだよ。やはり油注ぎのある牧師に祈られることで、油注ぎが解放されるということはあるからね。サトリコ姉妹はどう思う?」
「はい」姉妹は静かな声で言う。「油注ぎの継承ですね。エリヤとエリシャに見られる現象です。エリヤに注がれた油注ぎが、エリシャにも注がれました。また世代を越えて、バプテスマのヨハネにも同じ油注ぎが下ったとあります。だから按手の祈りによって、同様の油注ぎ、聖霊の賜物が継承されると考えられます」
 サトリコ姉妹を間近に見る機会は今までなかったけれど、こうして見ると、いかにも聡明な印象を受ける。端正な顔立ちに、高い知性を感じる。学生時代はきっと成績トップだったに違いない。何をやっても卒なくこなせそうだ。
「私も同感だね」牧師は満足そうに頷く。「じゃあどうだろう、礼拝の中で祈ってみようか」
「え、礼拝でですか?」とキマジメくん。
「いいと思います」
 すかさずサトリコ姉妹が言う。「礼拝は霊的な事柄の場所ですから、先生の油注ぎも増すでしょう。そこで祈れば、より強く聖霊様が臨まれます。聖霊のバプテスマを越えて、火のバプテスマさえ注がれるかもしれません」
「ほほう、火のバプテスマね。サトリコ姉妹、火のバプテスマは、私でさえまだ受けていない奥義だよ」溝田牧師は唇をすぼめて言う。「まあいい。じゃあキマジメくん、そういうことで。礼拝の中で祈ることにしよう」
「はい、よろしくお願いします」キマジメくんはそう言う他なかった。
 退室しようとしたところで、牧師に呼び止められた。「そうだ、キマジメくん」
「はい」
「まあ礼拝でみんなに言うことなんだけれど、このサトリコ姉妹が今回正式に、ウチの伝道師になることになったんだよ。主の強い導きと、本人の希望もあってね。それで礼拝の中で、彼女に按手するから。それで今後は、私が直々に弟子訓練することになるから、よろしくね」
 自分に関係あることかと思って聞いていたら全然関係なかったので、キマジメくんは曖昧に返事をするしかなかった。
 
 会堂でしばらく待っていると、賛美奉仕の若者たちが一人二人とやって来た。そして礼拝の始まるちょうど2時間前に全員が揃って、賛美の練習を始めた。
 そのうち溝田牧師が入ってきて、例のリハーサルが始まった。牧師が鋭い眼光で見守る中、司会の子が緊張気味にリードし、一曲目の賛美を始める。しかしすぐに牧師のストップがかかった。「ちょっと、マイク持ってきて」
 音響係の子が足早にワイヤレスマイクを持ってくる。牧師はそれを掴むと、さっそくいつもの「訓練」を始めた。(続く)
 
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・この物語はフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。
・この小説は不定期連載です。
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